もう10日間が過ぎようとしています。
名取事務所公演「女の愛・女の生涯」
無事に上演、そしてたくさんの温かいお声をいただきました。
今回の公演、最初からいろんな意味で挑戦で…麻子さんにとっては本当に繊細で深淵な世界への挑戦だったと思うし、私も女性の一生という大きなテーマから人間の生き方まで深いところまで感じないと演じきれないそんな演目でした。
体調管理も含め、歌の人たちは本当に役者とはまた違う精神の使い方だと思います。
どっちが大変ということはなく、ただ近くでこの数ヶ月密にやりとりしていて、麻子さんのプレッシャーは相当だったと思います。でも本番では解放されて、本来の麻子さんの魅力に溢れた一部の演奏を聞いていて、私は楽屋で大きくガッツポーズでした!
さて演劇パートは脚本のない中での創作となりました。
まず、2部の女性。
…実は本当に幸せでした。
男性目線と言われようが、古臭いと言われようが、こんなに愛する人と出会えてこうやって生きている女性の生き方を古臭いと非難することは一つもないな、と思っていました。それこそ、男に仕える生き方は古い、時代錯誤、と決めつけてる人の方が視野が狭いと。もしもこの女性が本当に幸せならばそれで良いのではないでしょうか。
ただ、ラスト「これこそが女の生き方なのよ…きっと…」この「きっと」に込められた意味は大きく、幸せと信じきって生きてきている人間でさえもほんの少しの「これでよかったのかしら?よかったのよね」と言い聞かせる部分があるのですよね。
もちろんこれはシャミッソーの詩に書いてあるわけもなく、今回の構成の中の一つの演出家が入れたメッセージです。
そして、3部は非常に苦しいのです。自由に生きてるのに。
各シーンの最後、「これでいいの?いいのよね?」「喜ばしいはずなのよ」「でも…できない…」と自分に言い聞かせる言葉で終わります。二人で創っていくうちにそうなりました。
私たちの人生は歩いてきた道が後ろにできます。その道にはたくさんの岐路があり、その一つ一つの選択を「これでよかったんだ」「私の選択は間違ってないんだ」と言い聞かせて歩いてきている気がします。「だからこそ、今の私があるんだ!」と。
現代は選択肢がたくさんありすぎて…
3部のストーリーを構築する際、たくさんのパターンがありました。結婚しない、シングルマザー、離婚する、不倫する、仕事の比重…今の時代は「普通」がもはやないからこそ、一つの生き方を示してこれが現代女性だというのは実に難しい。
だから今回は最終的には2部の生き方からそう遠くない人生をモチーフにしました。
そうやって自分で自分の生き方を決めていくのが現代。自由は苦しい。責任が伴う。そう感じながら演じていました。
でも、ラストシーン、生ききった充実感があり、笑っていられたのは涙が出てきたのは3部の女性でした。
本当にたった一回の公演のためにたくさんの方々のお力をお借りしました。
この企画をレパートリーに加えてくださった名取事務所さんには心から感謝いたします。
私たち二人ではできない規模で公演ができました。
楽屋周り、受付周りも丁寧で気持ちよく、安心していました。
本当にありがとうございました。
スタッフの皆さん、あんな短い稽古時間で色々備えてくださりありがとうございます!
普通の演劇公演とは全く違うので、ご苦労もおかけしたと思います。
そして、演出の髙岸さん、あなたがいたからこそこんなに深くメッセージを持った作品になりました。
シェイクスピアからのこのシリーズ、ワガママであまりよくわかっていない表現者2人を相手に大変だったと思いますが、本当に一緒に作品を作れて幸せでした。演出家髙岸未朝のセンスを毎回、好きだな〜と思いながら創っていました。
もっともっと演劇作品も演出してください!みんなそう思ってるよ。笑
本当にありがとう!!!
そしてそして、麻子。
あなたとNYの街角で座りながら「何かやりたいよね〜!」と笑いながら言ってたあの日々。
やっぱり二人とも大変だったけど一緒に作品を創れたことで私たちにしかできない舞台になりました。
あなたがいたからこそ、です。たくさん一緒に悩んだり苦しんだりもがいたり…それも全部血肉となってるよ。
何があっても大切な友達というのは変わらない、その信頼感があるからこそできた舞台だと思う。
心からありがとう!
そして最後に、この状況下、観に来て下さったお客様に感謝を申し上げます!
あの温かい会場の空気感を忘れません。
ありがとうございました。
この企画はこれで終了です。
それぞれがまたいろんな経験をしていつの日か…
そんなことがあることを願って。。。
田野聖子