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日常のきらめき。

「Our Town」を観てきました。
周りの評判が高い作品だったので・・・。


オフブロードウェイの劇場で上演中です。


ワイルダーの「わが町」と言えば、日本でもよく知られています。
私も、もう何回観たでしょうか・・・。演じたことはないですけどね(笑)
ワイルダーは「ロングクリスマスディナー」に出演したことがありますが・・・。
両方ともアメリカのよき時代の家族劇。


今日の「Our Town」は今まで観た「わが町」とはまったく違いました。


元々、この芝居、観客と演者の境目をなくす方法がよくとられる作品ですが、
そういう手法って、演出意図が前面に押し付けられて、自己満足なものが多いのも事実。
しかし、今日の舞台は・・・それが見事にマッチしていました。


まず、
劇場に入ると3方客席・・・。
あれれ?なんか、この雰囲気「花いちもんめ」のNY公演を思い出す〜。
と思いながら、客席を見回すと・・・不思議な感覚。


そう、舞台となっている真ん中のスペース。
でも、普段は客席なんですよね。そして、普段舞台で使われているであろう場所には客席が並べられていて、正面のひな壇になっています。
普段二階席として使われているエリアもうまく舞台として使っています。
役者の出入りは、観客と同じで入り口から。
演技エリアにも客席があり、その後ろが外の通りになったりもします。


観客は芝居が始まった瞬間から、町の木々になったり、育てられている野菜や花になったり、結婚式場の参列者になったり、墓石になったり・・・。
芝居へのいざない方が絶妙。


そしてなんといっても、語り役の舞台監督のカジュアルさ!
ジーパンで携帯電話を持ちながら時間確認するし、かといって、奇をてらった演技でもない。
ごくごく自然に、舞台監督が舞台上に出てきて話し始めました・・・と言うスタンス。
当然、全ての役がカジュアルな現代服。
全ての物事はマイムで表現され、そっけない机と椅子だけのシンプルな舞台。
照明も変化がないどころか、客入れのまま、進んじゃう。
いつもなら、アメリカの古きよき時代のノスタルジックな空気感がそこら辺に漂う芝居ですが、
なぜか軽やかなのです。



でも!
それが3幕で!!!
・・・いやー、これから観る方もいらっしゃるでしょうから書きません。
この演出にはそれはもうびっくり。
逆転の発想よね。


このシーンが入ることで、それまでの全てが、一気に生き生きとしてきます。
町の様子、毎朝の澄んだ空気、外からの光、子供たちの声、夜の月・・・
ぜーーーんぶ、私たちも同じ時代を共に過ごしたかのような気にさせてくれる。
作り物を見せられることで、こんなにも今まで劇場全体で作り出してきた世界に「時間」というの色を与えてくれるのか・・・と驚きました。
ブラボーです!!!


日常は何気ないもので、それを過ごしている毎日には気づかないたくさんの幸せがあるんですよね。
でも、
「私も、これから日常生活に感謝して・・・うんぬんかんぬん・・・」
とは言えません。
なぜなら、人間はわかっていてもこれを繰り返してしまうから。
この芝居はそんな日常のきらめきとそれを見過ごしてしまいがちな私たちを、スーっと心に染み込ませてくれました。
観てよかったです。本当に。
こんないい芝居が、小さな小屋に転がっているから・・・
やっぱり芝居の力は無限だなぁ、と感動してしまうのです。

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