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今、ここにいること。

渥美國泰氏。
76歳で天に召された。
私は、この渥美氏が主宰する、アクト青山という養成所に通っていたのは、20年前、高校3年生の1年弱だけだった。みんなが真剣にプロの役者を目指す中、私は、まずは大学に・・・という気持ちだったからか、比較的軽く楽しい気持ちで毎週通っていた思い出がある。
何よりも、千葉の田舎から2時間かけて「東京の演劇の養成所に通う」ということだけで興奮していた気がする。
そんな、私に渥美さんは「お前は大丈夫だから。」「お前はそのままで行けるよ」と呪文のように言ってくれていた。
結局、大学に進んだあとも俳優座の入った後も「何かあればここを好きに使っていいから。」「分からないことがあれば見てあげるから」と、どんぐりまなこをフニャーとさせながら笑顔で言ってくださった。
あたしは、その言葉に甘えるだけで、だんだん足が遠くなっていった。
今日、
本当に久しぶりに渥美さんのお顔と会った。
「アカシアの町」の宣伝を兼ねてご挨拶をして以来だから、10年ぶり。
ふた回りも小さくなった渥美さんは、綺麗で、穏やかで、幸せそうだった。
20年前と変わらぬご自宅兼稽古場の雰囲気。照明。空気。
ぶわーっと、時間が20年前に一気に戻って行った。
静かに目を閉じている渥美さんと心の中で会話をしながら、涙が出そうになり、慌ててひっこめた。
だって、渥美さんはこの稽古場で涙は好きじゃないから・・・。
渥美さんが「お前は俳優座に入れるよ。受ければ。」と軽く笑いながら言った言葉が、そのまま軽い気持ちで俳優座受験につながった大学1年。
人の人生はたくさんの交差から成り立っていて、各分岐点にはたくさんの人たちとの出会いがある。
自分一人で大きくなって、自分一人でがんばってきて、自分一人で今ここにいると思ってしまいがちだけど・・・そんなことホントに愚かなこと。
今、私がここにいるということ。
それは、たくさんの人たちとの出会い、支えがあるから。
渥美先生、
きっと、今いる場所でも、たくさんの若者に囲まれて慕われて、笑っていることでしょうね。
ご冥福を心からお祈りしています。
・・・そして、
ありがとうございました。
あなたがいたから、いまの私がいます。

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