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西川竜太郎という俳優。

俳優 西川竜太郎。享年40歳。

 彼の初舞台「カラマーゾフの兄弟」
 ロングランとなった「十二夜」

私の長い旅公演にはいつも竜ちゃんがいた。

今回のラボ公演。顔合わせ初日。
彼は来た。
痛みに悲鳴を上げる身体にモルヒネを打って…
自分の命を削って芝居にかける…
それが西川竜太郎という俳優。

彼の朗読は

 時にか細く、
 時に必死に、
 時に消え入りそうに、

数行の文字を行ったり来たり…

朦朧とした意識の中、それでも想念だけで言葉を絞り出していた。
誰もが息を詰め、水を打ったような静寂に包まれる稽古場。
彼の声と息づかいだけが微かに聞こえる。

演出家から優しく肩に手を置かれると、
 彼は
  「すみません、
  どうしても出たかったんですけど、無理みたいです。
  すみません、降ろさせてください。」

余命宣告の半年を過ぎて 2年半、
生と必死で向き合ってきた彼から聞く、初めての降板の言葉だった。

あとで聞いた。
その日、お医者さんから
「稽古場に行き着く途中で万一のことがあってもおかしくない状況」
と、言われてきたのだと…

稽古場にけじめをつけにきたんだね。
 すごいよ、竜ちゃん。
 格好いいよ。

その翌朝、竜ちゃんは息を引き取った。

最期の最期まで命を振り絞り、芝居の現場にいた西川竜太郎という俳優。
 私たちは、絶対、忘れない。

何を書いても、この気持ちは書き表せないけど…
でも、
最期の瞬間まで生命を振り絞って生き抜いた
 俳優が…
 男が…
いたことを知ってもらいたい。

俳優 西川竜太郎。享年40歳。

あなたは私たちの中に生き続ける。

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2 Comment

  1. 近藤一彦 より:

    読んで苦しくなりました。でも、勇気と生きている大切さに改めて気づかされました。僕は、彼と面識はありませんが、同じ表現者として彼のことを一生忘れることは出来ません。

    • seikotano seikotano より:

      近藤監督、
      そういっていただき、心から感謝です。
      …元々魅力溢れる人物でしたが、癌と向き合いだしてからの生き様は、本当に凄まじくそれでいて穏やかな人生でした。
      亡くなる直前の姿を含め、私も彼を生涯忘れることは無いでしょう。

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