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私は空っぽの劇場が好きだ。

それに気付いたのは、「村岡伊平治伝」という芝居で四国に行った時のこと。
俳優座では基本的に、役の大小に関わらず、若手から順番に何人かはスタッフと共に移動をして、仕込みや楽屋作りを手伝う。
もちろん私は初舞台からほとんどの芝居が一番年下だったので、全ての地方公演は仕込み班と呼ばれる若手だった。
しかし、この「村岡~」だけは若手の女優の数が多すぎ、全員仕込み班に入っても邪魔だ、ということで、A班、B班に分かれる事になった。
私は前半に仕込を行う、A班として作業を手伝っていた。

そして後半は、本隊として仕込み終わったころ楽屋入り。
初めての経験。
そこで愕然とした。
舞台に行ってみたら、セットはもちろんのこと、照明も、音響も全て準備万端!
今すぐ本番ができる状態だった・・・・。

仕込み班のとき何が楽しかったかと言えば、まだ何も搬入していない素舞台の上から客席を眺めること。
誰もいない客席の奥までを静かに見ているその瞬間が好きだった。
そして一つ一つ、セットが運び込まれ、世界が出来上がっていく。
そして舞台を終え、最後に空っぽになった舞台から客席を見る、あのなんともいえない、寂しささえ感じる瞬間・・・・。

「村岡伊平治伝」。初めてその瞬間を味わえなかった芝居だった・・・。

今回の「十二夜」。
私は台詞も歌も多いから、体調を整えて欲しい、と言われ、年功としては下だが、全面的に仕込み班から抜けることになった。
先輩、後輩、みんなの気持ちが、本当にありがたかった。
・・・と同時に少しだけ寂しくもあった。
こうやって、少しずつ新人から若手、若手から中堅、そしてベテラン・・・と、時が経っていくんだな・・・。
そして、私の大好きなあの空っぽな舞台を観ることもなくなっていくんだな・・・。

その、時の積み重ねに、私は中味がきちんとついていくんだろうか。
いつまでも`空っぽな舞台が好き´という心は残しつつ・・・。

 

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