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先日、あるインタビューで「今までで一番運がよかったと感じたことは何ですか?」と聞かれた。

舞台が全くなかった4年間。
これこそが私の運を決めた気がする。

私の同期は全員が研究2年生のときに初舞台を踏み、その後も旅公演に出たり、なんども舞台に出たりしていた。
私はというと、研究生の3年間は全く役につかなかったのだ。
査定審査が毎年行われて、3月には昇格するか退団か言い渡されるため、キャスティングされない私はいつもドキドキしてその査定を迎えていたように記憶する。

研究3年生のとき、ロングランを続けていた芝居で一人役者が降りてしまい、群集の役があいてしまった。
当時、その公演についていた同期の男の子が「聖子、今立候補すれば、その役につくことできるかもよ。」と教えてくれた。
私は、ちょっと躊躇し、1週間悩んだ・・・。
自分が誰からもキャスティングされないまま、初舞台を踏んでいいのだろうか・・・。
そうやって悩んでいる間に、他の研究生が立候補し、その舞台に立つ事はなかったのだが・・・このあと、この悩んだ1週間が私のデビューを決めることを当時まだ知らなかった。

舞台がなかった4年間、私は映像を中心に仕事をしていた。
別にとくに映像向きだったとは思わないが、おそらく若手の女優たちが地方公演の舞台などで東京にいなかったためであろう。
TVや映画の現場に一人で行かされ、何も知らない撮影所の中で鍛えられた。

4年目を迎えた準劇団員のとき、千田是也氏演出「カラマーゾフの兄弟」にキャスティングされた。
もちろん初舞台の私は、台詞の数行の少女の役。
ところが、メインキャストが女優が都合により降板、急遽その役のオーディションが行われた。
1年前、同期に誘われた作品についていた役者を除いて全員の女優が呼ばれた。
・・・その役者たちは舞台が重なっていて、オーディションを受けることすら出来なかったのだ。
1年前、躊躇したあの時間が私を「カラマーゾフの兄弟」のメインキャストに巡り合わせてくれたのだった。

あの4年間、舞台につくことはなかったけど、多くのことを吸収し、たくさんの人に助けてもらった。
自分一人ではないという事も分かったし、自分の中にある人をうらやむ嫉妬心や挫折感など醜い部分も確認できた・・・。
あの4年間がなかったら、今の私はいない。
芝居を続けていなかったかもしれない。
そのくらい大きな4年間だった。
“あの時期、何も舞台につかなくって、運がよかった!”

他劇団になるが、故杉村春子さんがおっしゃった言葉がある。
「私は若いとき仕事がなく、時間だけがあった。その時間が今の私を作っている。」
舞台につかず落ち込んでいたとき、同期の女優が私に教えてくれた言葉だ。
「聖子を見ていると、その言葉がよく分かる。」
そういってくれた彼女の言葉こそが私の支えとなっていたことも事実。
今・・・そう、時間がいっぱいある今こそが、勝負なんだ・・・と。

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